九州南部、同北部、四国、近畿、北陸で一斉に梅雨明けとなった 7月24日、 熊本県人吉市、肥後銀行人吉支店の3階会議室にて、「シェアリングサミット2019」の第2回目を開催しました。
熊本県南部に位置し、鹿児島、宮崎に隣接し、九州山地に囲まれた風光明媚な盆地で、日本三急流の一つ、球磨川くだり(くまがわくだり)や、文化庁「日本遺産」に認定された青井阿蘇神社、日本の20世紀遺産20選に選ばれたSL人吉肥薩線をはじめ、自然と歴史が輝く人口約3万2千人の人吉市。今回の参加者は、100名超!本当に多くの方にご参加いただきました!ありがとうございました。
第1セッション「観光×インバウンドにおけるシェアエコの潮流と人吉の可能性」
登壇者
松岡 隼人 氏 人吉市 市長
道越 万由子 氏 株式会社BEYOND 代表取締役
森戸 裕一 九州シェアリングエコノミー推進協会 代表 内閣官房シェアリングエコノミー 伝道師
第1セッションは、人吉市の松岡市長が登壇。松岡市長から、写真や統計を織り交ぜながら、人吉市の紹介、そして人吉市の現状について説明いただきました。観光資源に恵まれる人吉市も、「日帰り客、インバウンドは増加するも、宿泊客数は横ばい続き 」と松岡市長。
・観光資源の点在(導線が切れている)
・人吉に来ても、まず、何をすればいいの???
・インバウンド受け入れ体制の遅れ
など、「観光客目線の弱さに起因する課題 」を感じていると続け、人吉球磨10市町村が一つとなった広域連携による「観光地域づくり」への取組、地域で受け継がれる普遍的な価値を活かしながら、新たなものに生まれ変わらせるべく進行中の各種プロジェクトが紹介されました。
道越氏は、「『SNS×地方創生マーケティング 』これからのインバウンドでの効率的情報発信による集客術とは!?〜人吉ブランドを世界に発信しよう!〜」と題し、自身が支援している自治体の事例も交えながら、地域のブランド作りによる継続的なファン獲得、ブランディングの確立とファンの囲い込みによる “目的地化 ” の重要性を解説。また、インバウンドPRには「おもてなし精神」が需要なポイントであり、客観的な視点、密で丁寧なコミュニケーション、ひと気や現場間のある記事を心がけるように、とのアドバイスで締めくくりました。
第2セッション『商店街や空き家の再生と九州のシェアエコへの取り組み』
登壇者
木藤 亮太 氏 株式会社油津応援団 専務取締役 株式会社ホーホゥ 代表取締役
大瀬良 亮 氏 株式会社Kabuk Style CEO
Roland Haller 氏 株式会社ガイアックスTABICA事業部 地方創生室 訪日観光コンサルタント
第2セッションは、シャッター商店街に20店舗を誘致することをミッションとして、公募で選ばれた専門家、木藤氏の話でスタート。「油津商店街は、IT企業の前に保育園が並ぶ、ヘンな商店街」と木藤氏。一般的な商店街は、空き地、空き店舗を埋めようとするが、油津商店街は、「空間」を作ったという。「広島東洋カープのキャンプ地」としての知名度も活用し、空き店舗に今まで誰も予想すらしなかったIT企業を誘致、働く「場」を作り、雇用、商店街の活用の循環を創出。また、大学生が運営するゲストハウス(食事を出さない→商店街を利用)、小学生アイドルによる商店街PRなど、 空間シェアによる人と人とのつながりを生みだす、新しい商店街の取り組み事例は、多くの参加者に響いたようで、メモを取りながら聞き入っている姿が印象的でした。
世界中を旅して働き、そこで得た、東京だけでは出会えない学び、経験から、どこでも働ける時代にどこでも働く環境を提供したいと、世界を旅して働く” 新しいサブスク型住居サービス 「HafH(ハフ)」を、2019年1月、長崎から提供を開始した大瀬良氏。サービス名の「HafH(ハフ)」は、「Home away from Home(第2のふるさと)」のアルファベットの頭文字を繋げたもので、住居をシェア(Co-Living)+働く場所をシェア(Co-Working)+地方をシェア(Co-Locating)=新しい形のコミュニティづくりを展開している。「HafH(ハフ)」のターゲットである、海外の「旅して働く」人々、つまり、Digital Nomadsは、約10億人(予測)。また、7月24日現在で、HafH利用可能拠点は国内外合わせて95拠点。「Co-livingをするDigital Nomadsが大事にするものは、Eco System on Community。誰がその場にいるのか、誰と住むのか」と続け、「このコミュニティをどうやって盛り上げていくか、そこに地元の人の力が重要なファクターになってくる」と締めくくられました。
地域おこし企業人として日田市で活動中の、株式会社ガイアックス TABICA事業部 地方創生室 Roland Haller氏は、地域の暮らしを体験できる着地型観光サービス「TABICA(たびか)」を紹介。五感を重視し、古臭さと現代アートを組み合わせてギャップを楽しませる様々な「体験」の作り方、発掘の仕方、等、ユニークな事例を紹介しました。
九州出身で九州で活動中の木藤氏が、九州出身で外(東京)から九州を見ている大瀬良氏、海外視点で九州を見ているHaller氏に、「シェアエコのサービスは、IT(無機質、ドライ)と、地方の現場(ウェット)をつないでいく必要があるが、苦労していることや意識していることは?」と質問した。
大瀬良氏:多かれ少なかれ、自治体から反対されることはよくあること。既存の付き合い方、常識を尊重しながらも、プロジェクトを進める、この進め方に苦労することは日常茶飯事。未来志向のコンセプトを掲げると、地元の風と土が水と油になることもあるが、この、風と土のコーディネートこそが大事だと考えている。
Haller氏:「ギャップ」を大事にしていると話をしたが、フランス人である私の場合、ギャップというよりも、むしろ、完全に違う(笑)。反論されて当然。日本では、反論がある人しか声を上げない、そして、その大きい人の声、意見に流されがち。「絶対にこれはしてはだめなもの」と思っている人は、そうそういないので、いろいろな「声」を受け入れながら、面白い「人」「体験」を探している。
それを受け、木藤氏は、「支援当初、今から取り組もうとしていることが、全くと言っていいほど周囲に理解されなかったが、そこで「行政の力」を感じたのも事実。よそ者だから地元の集まりに顔を見せる、自ら近寄る、など、行政がアテンドしてなじませる努力が大事なんだと痛感した」と、地元自治体のサポートの大切さを伝えました。
第3セッション『観光×防災×働き方におけるシェアエコ活用事例』
登壇者
野島 祐樹 氏 ANAホールディングス株式会社
大山 真史 氏 テルウェル東日本株式会社 営業企画部 ビジネス開発部門長
西岡 誠 氏 九州周遊観光活性化コンソーシアム代表
第3セッションは、野島氏、大山氏、西岡氏の自己紹介のあと、事業背景、シェアエコの事例などを紹介。
ANAがシェアエコに着目するのは、ターゲットとなる需要のすそ野を広げるべく「モバイルファーストのミレニアム層との接点」が理由の一つ。シェアリングエコノミープレイヤーと連動してサービスを展開することで、ANAを使って旅行していただく人に、今までになかった便利なサービスを提供。シェアリングサービスを使ってできる新たな旅のカタチ(未来のツーリズム)は、新しい体験、交流、価値づくりを目指していくという。
また、Wi-Fi自販機を展開する大山氏は、インバウンド増加、スマートフォンの普及率、災害時の情報収集手段、という観点から、「地域活性化にWi-Fiは必要不可欠」と力説。公衆無線LAN(Wi-Fi)と自動販売機をパッケージし、設置オーナーの費用負担なくWi-Fi環境を構築できる、Wi-Fi自動販売機を紹介。同自動販売機は、映像配信、防犯対策、多言語対応等、オプション機能も豊富。
「車泊」を提唱する西岡氏は、「通過型地域、過疎地域、市街化調整区域などは、自然や歴史、温泉など、潜在的な観光力が発揮できていない地域、情報発信が不足している地域が多い。シェアリングエコノミーを通じて、従来の観光の常識、価値観を変え、新しいシェアモデルを創ることが大事」と語った。
最後に、当イベント主催団体代表の森戸が、
「トライアンドエラーでよい。スモールスタートでよい。他の真似からはじめて何も問題ない。このサミットを機に、ここ人吉市で、いろんなチャレンジがうまれることを期待しています」と締めくくった。
恒例の集合写真。100名超の参加者を1枚におさめるために、パノラマ撮影。
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